ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 石川さんは間宮さんに笑顔で案内して、お茶の準備の為に席を外した。

「いつも石川さんとは電話で話をしてたんだし、あんなにビビんなくてもいいのに」
「電話では顔も体長もわかりませんからね」
「たいちょう? もしかして体の長さ?」
「はい」
「もうっ」
「ふふっ」

 二人で笑い合いながら間宮さんはソファに座り、私は隣に座ろうとしたが、間宮さんが私の腕を掴んだ。
 そのまま引き寄せられて、間宮さんは私の耳元で囁いた。

 加藤をどうしても合コンに連れて来いって奴がいる――。

「……それで」
「玲緒奈さんと松永ブラザーズ、須藤さんの四人に承諾を得て来いって言っといた」
「ふふっ、そうやって私に悪い虫がつかないようにしてるからこの年齢(トシ)になっちゃいましたよ」

 腕を離した間宮さんは小さく息を吐いた。
 私はここ数ヶ月、ある用事で複数の署に出向いている。初めて行く署もあるが、内容も内容だからすごく歓迎されている。

「加藤は行く先々で独身だと言ってるんだろ? だから引き合いが多いんだよ」
「ふふっ、お声がかかるのは嬉しいです」
「もー、早く結婚しちゃえよ。三十四だっけ?」
「ええ」
「敬志さんと早く結婚しろよ。丸く収まるだろ、それで」
「嫌です」
「何でよ? あんなイケメンで背が高くてさ、加藤と並んでると刑事ドラマみたいだなって思うのに」
「アハハハ」

 私は松永さんの嫁候補だと思われている。まあ玲緒奈さんの舎弟だし、そうなってもおかしくはないのだが、松永さんは私の相澤への恋心を知っているから私との関係が近いと周囲に誤認させるようにしているのだ。
 玲緒奈さんと松永ブラザーズのガードは固く、お陰で誰も寄って来なくなった。私が年を取ったのもあるだろうが。

「失礼します」

 石川さんが来た。
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