ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 長い廊下を折返した時だった。
 途中にある階段から葉梨と岡島が出て来た。
 ここは二人の所属だからいてもおかしくはないのだが、生活安全部は別の階だから会わないと思ったのに、いた。面倒くさい。

「あっ、加藤さん……」
「奈緒ちゃん何やってるの?」
「スキップ」
「あれ? 岡島さんも葉梨もご存知なんですか?」
「ええ。岡島は同期で、葉梨とも面識はあります」
「奈緒ちゃーん!」
「そうなんですか」

 私たちは二人を無視して、スキップを続けた。
 二人は私たちの後についてくる。そうだ。岡島が私に無視されたくらいで挫けるわけがないのだ。

「奈緒ちゃん何してるの?」
「スキップ」
「見ればわかるよ」
「ついて来たら殴るよ?」
「えー」

 二人は立ち止まり、私たちを見ていた。隣の彼は笑っている。

「これが噂の狂犬加藤なんですね……んふっ」
「ふふふっ」

 廊下の端までスキップして、私たちは止まった。
 彼は良い笑顔だ。どうか子宝に恵まれて欲しい。

「ありがとうございました」
「こちらこそ」

 立ち話をしていると、岡島と葉梨がこちらに向かって来た。葉梨は遠慮がちだが、岡島は私の名を呼びながら歩いて来る。

「私と葉梨は同期なんですよ」
「そうなんだ」

 葉梨は彼に近づき、小声で話している。
 岡島は葉梨から聞いたのだろう。鬼子母神奈緒のスキップ大作戦だと知ったようだった。

「奈緒ちゃんお疲れさま」
「うん」
「この後は?」
「帰るよ。須藤さんと一緒に帰る」
「そうなんだ」

 岡島は何か話があるようだ。
 私は彼に、後で課に顔を出すと告げ、外してもらった。
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