ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ

第44話 居酒屋とクリップと情報網と

 午後七時三十六分

「久しぶりに奈緒ちゃんがいっぱい食べる姿を見た気がする」
「でも、三十超えたらちょっとだけ少食になりましたよ」

 鬼子母神奈緒のスキップ大作戦を終えて署を後にして、帰りがけに須藤さんと飲みに来た。
 ここは松永さんの息が掛かっている居酒屋だ。
 岡島、葉梨、相澤と四人で来たあの日以来、来ていなかった。一年八ヶ月ぶり、か。

 二の腕ムニムニの女将さんの件で、松永さんはずいぶんと対応に苦慮していたが、葉梨があのタイミングで気づいてくれたから、何事もなく解決した。本当に良かった。

「ここ、いい店だよね」
「そうですね。私は女将さんが好きです」
「ふふっ、蚤の夫婦」
「んふふ……」

 須藤さんの夏は忙しく、日毎に萎びていく姿は直視出来なかったが、今はもう大丈夫だ。
 美味しそうにビールを飲む須藤さんは肌の色艶も良く、元気そうだ。おそらく、恋人とも上手くいっているのだろう。内から溢れ出す幸せそうな雰囲気がある。

「須藤さん、彼女とは上手くいっているんですか?」
「え? 彼女じゃないよ、友達だよ」

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