ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 葉梨とは来月十二日から隣県の捜査で一緒に働く事になった。私も葉梨も手持ちの仕事の引き継ぎで忙しくしていたが、やっと余裕が出来た。
 本当は岡島が良いと思っている。葉梨も優秀だが、他の捜査員を考えるとやっぱり岡島の方が都合が良い。

 だが須藤さんは葉梨だと決めた。それは私の為だと暗にほのめかしたが、葉梨の仕事ぶりを見て判断したのだろう。

「来月から加藤さんと一緒に仕事が出来ると知って、嬉しかったです」
「なんで?」

 ちらりと私を見る葉梨は笑っている。
 来月は葉梨の誕生日でもある。いい肉、十一月二十九日だ。

 俺の誕生日も一緒に過ごしてくれますか――。

 後輩の誕生日を祝う先輩としてその日を迎えれば良いのか、そうではないのか。
 葉梨はどうして欲しいのだろうか。

 隣県の捜査の捜査員再編では相澤も加わる事になった。相澤と仕事するのは二年ぶりだ。
 毎日、相澤と会える。
 最後に会ったのはスイーツブッフェで見かけた時だが、一緒に過ごしたのは葉梨と初めて会った日だった。

 裕くんを好きになって、もう十六年が経った。
 裕くんが結婚しないから、いつまでも片思いのままだ。裕くんに彼女が出来ると辛くて悲しくて、でも何も出来ないまま時は過ぎた。
 早く結婚してしまえばいいのにといつも思っている。

「これまで加藤さんに教わった事を俺が出来ているか、一緒に仕事をすれば、加藤さんに見てもらえますから」

 ――誕生日の事には触れないのか。

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