ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 私は今、衝撃に耐えている。

 応接間に通された私は驚いた。ソファが、いっぱい、ある。

 来客を何人想定しているのかと、数えてみれば二十人以上だ。
 そして私はどこに座れば良いのかと悩んだ。黒い革張りのソファに白いレースのカバーが半分掛けてあるソファだ。ここは署長室かと思ったが、よく考えたら署長室にもこんなにソファは無い。どこに、座れば、良いんだ。
 そして応接間は何畳あるのかと考えたが、もう、私は諦める事にした。

 ――お父さん、官僚って凄いんだね。

 だが私は考えた。
 今日の私は葉梨家の子息の職場の先輩として招かれたのだ。ならば上座だ。私は、上座だ。
 官僚宅に訪問した地方公務員ならば廊下で正座だろうが、今日の私は違う。
 入口、ソファのレイアウト、それらから導き出された上座は――。

「加藤さん、こちらに」
「うん、ありがとう」

 葉梨、ナイス。上座がイマイチ分かんなかったんだ。だがこの席は、私が導き出した上座と同じだ。だから多分、上座なのだろう。
 だいたい下っ端警察官など、こういった応接間の外では立哨だ。入ったとしても壁際に突っ立ってるだけだ。

 ――お父さん、娘は今、官僚の自宅で上座に座ってるよ。

 私は桐箱に入ったカステラを食べてモメラニアンと遊んだら走って帰ろうと思った。

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