ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 カステラの一番美味しいあの部分は紙が持っていく。残されたカステラをカステラとして認識していれば良いと、私たちは思い込まされている。おそらくあの紙には庶民が知ってはいけない真実があるのだろう。
 警察組織にいる者としては、そういった類いの事には慣れている。カステラの触れてはいけない闇――。

 私はそんな事を考えながら、よく分からない事に遭遇した時は陰謀論で片付けるのが一番だな、と納得して、カステラの保存方法を調べようとアイコンをタップした。

 その時だった。
 スマートフォンが鳴った。
 私の思考が読まれたのか。
 カステラの紙の闇に触れようとした思考を読まれたのか――。

 と思ったが、画面に表示された文字は『チンピラ』だった。
 令和最新版インテリヤクザに完全に切り替わるまでは『チンピラ』のままで良いだろうと、『出なくていい』から出世したチンピラ岡島から電話が掛かって来ている。
 私は薬指で通話をタップして電話に出て、スピーカーにして応えた。

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