ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ

第16話 熟女と壁ドンと偽ザイルと

 席を立った去り際の吉崎さんに促されて自己紹介を始めた岡島は私だと気づいていない。バカなのかな。私はそう思った。

 ――今、この場で抹殺出来ないだろうか。

 私はそんな事を考えながら偽ザイル松永と岡島のわりとどうでもいい会話へ適当に相槌を打ちつつ、岡島の脚や腕にボディタッチしたり、耳元で囁いたりして岡島の機嫌を取っていた。

「リナちゃんはどこの店なの?」
「吉崎さんのお店でーす」
「そうなんだー」

 声音を変えて無理をしているせいで喉が痛い。
 松永さんはそれに気づいて助け舟を出してくれた。

「岡島、リナはキャバじゃねえよ、熟女パブの方だよ」

 ――熟女。そうか、アラサー女は熟女だ。

 熟女パブ嬢の年齢下限は二十八歳――。

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