五十嵐くんに、食べられそうです。

ようやく学校についたので急いで駐輪場へ向かった。


グラウンドから聞こえる部活動生達の声は、夏休みということもあり、普段ほど賑やかではない。


いつもよりがらんとした駐輪場の1階の奥に自転車を停めてガチャンと鍵を掛けた。


そのまま駐輪場の裏に回って、高い植木沿いに進み、人一人通れるスペースが空いてるのを見つけると、そこを抜けて男子寮の建屋が見える位置に辿り着いた。


夏休みだから人も少ないはずだけど、一応、誰もいないことを確認しながら植木の隙間を抜け、寮の建屋に近づいた。


すぐそばにある1階の角部屋の前で立ち止まり、バッグから出窓の鍵を取り出して解錠する。


出窓の鍵は翔くんから終業式の日にデートしている時に渡された。



『俺の部屋に出窓から入っていいのなんて、紗英くらいだからさ。』



と、嬉しそうに笑って渡してくれた。



その時の翔くんの爽やかな笑顔を思い出して、思わず顔がほころぶ。



早く会いたい。


< 2 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop