Magic
生まれて初めて黄前琴葉(おうまえことは)がマジックを見たのは、八歳の頃に両親に連れられてラスベガスに旅行に行った時のことである。

「Ladeis and gentleman!ようこそ不思議の世界へ!」

スポットライトが照らすステージの上で、マジシャンが持っているステッキを一振りすると会場のあちこちから鳩が飛び出してくる。さらにもう一度マジシャンがステッキを振ると、鳩の姿は一瞬にして薔薇の花へと変わる。

「わぁ……!」

琴葉の心は一瞬にしてマジックの虜になった。ステージから目が離せない。目を輝かせ、目の前の魔法を見つめる。

「すごいね。マジックって」

日本語がポツリと聞こえ、琴葉は隣を見る。隣に座っていたのは、偶然にも琴葉たちと同じ日本人の家族だったようだ。琴葉の隣にいたのは十三歳くらいの男の子である。

「こんなの初めて見た!すごいよね〜!」

琴葉は男の子にそう言い、笑いかけた。男の子の頰が赤く染まっていく。

< 1 / 11 >

この作品をシェア

pagetop