転校から始まる逆ハーレム(本人に自覚なし)
午後の授業は数学でいつも以上に長い証明を書いていると咲ちゃんが泣きそうな顔で振り返った。
「この問題ムズい〜…」
「確かに書く量多いよね」
「そういうことじゃないんだけど…」
私のシャーペンを手に取り、ノートの隅に落ち込む猫のイラストを描き始めた。いつもかっこいい咲ちゃんだけど今はちょっと可愛い。
そのタイミングで横から高梨くんが
「梨奈ちゃん、この証明の意味わかるんだね。実はここ省略できるんだよ?」
と教えてくれた。
「ほんとだ!じゃあこうしてここもできるね」
「そうだよ。梨奈ちゃん飲み込み早いな。この証明実は結構難しいやつなんだよね。俺は数学だけは得意だからできたけど。」
盛り上がっていると咲ちゃんが
「何言っているのか全くわからないんだけど…りなぁおしえてぇ」
とほっぺをつついた。
「ごめんこの文修正してからでもいい?」
と、もう一本のシャーペンを出そうと筆箱を見るとシャーペンが無かった。忘れちゃったみたい?
咲ちゃんが夢中で私のシャーペンのグリップをもちもちしている。取り上げるのもなぁ…
そんなくだらないことで悩んでいると高梨くんがシャーペンを差し出した。
「使う?」
「ありがと!」
細身の綺麗なシャーペンには名前が彫られていておしゃれだった。こんな感じのシャーペン欲しいなぁ。今度文具店に行くんだった。今度探してみよーっと!
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