花縁～契約妻は傲慢御曹司に求愛される～
「ち、ちょっと待ってください。拾っていただいたお花を……」


「車を停めたままなんです。申し訳ないが一緒に来てください。まだ話もあるので」


「いえ、あの私、帰ります……っ」


意思を伝えるも、彼は手を離さずどんどん歩き出す。

車が心配だろうし、仕方ない。

車のところへ到着したら、すぐに帰ろう。


強引ともいえる態度に驚きつつも、彼のように美形でお金持ちそうな男性は断られたりしないのだろうと小さくため息を吐く。

手を引かれながら盗み見た横顔は、やはりとても整っているし、手首からのぞく腕時計は高級ブランドのものだ。

身に着けている靴やスーツも、街灯のもとで改めて観察すると、とても上質なものだとわかる。

さらに彼の車は高級外車で、完全に別世界の人だと確信した。


「どうぞ乗ってください」


当然のように助手席のドアを開けられ、目を見開く。


「電車で帰りますので大丈夫です。お気遣いありがとうございます」


送ってくれようとしているのだと遅れて気づき、慌てて返答する。


「その状態で？」


指摘され、ずぶ濡れで汚れた自分の姿を思い出す。

確かにこのままでは電車にもタクシーにも乗りにくい。


「でも車が汚れますから……」


この状態で高級車に乗り込む度胸はないし、弁償の金額を想像しただけで気が遠くなる。

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