花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
わがままなわけがない。


こんなの、ただ嬉しいだけなのに。


この人はどこまで私を幸せにしてくれるのだろう。


伝えたい気持ちも感謝の思いもたくさんあるのに、どれひとつうまく口にできない。


「どうか、俺とこれから先の生涯をともに歩いてもらえませんか?」


幸せの追い打ちをかけるように、頬から外した手で部屋着のポケットから小さな箱を取り出す。

ゆったりした動作で私の左手を離し、彼が真っ赤な箱の蓋を開けた。


「こ、れ……」


「婚約指輪を、ずっと贈れていなかっただろう?」


「だって、あのときはそういう取り決めで」


キラキラと台座の上で輝く、豪華すぎる指輪に驚きつつ返答するも、彼はまったく意に介さない。

宝石類に疎い私ですら知っている、高級ブランドのダイヤの指輪は眩しい光を放っていた。


「これも俺のわがままだとあきらめて、受け取ってほしい」


私の反応をわかっていたかのように断れない台詞を口にし、私の左手にもう一度触れた彼の温もりに胸が詰まった。


「俺には誰よりも逢花だけが必要だから」


それは出会った夜、私が泣きながら伝えた願い。

彼は見事に叶えてくれた。
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