花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
私の前髪を長い指がはらい、額に口づけられたのが、始まりだった。

眉、瞼、鼻筋、頬とキスの雨を降らせた葵さんが最後に唇を塞ぐ。

上唇を軽く甘噛みされて、唇の合わせ目を舌が軽くなぞる。

くすぐったさに少し唇を開くと、すぐに彼の舌が私の舌をとらえた。

深くなっていくキスに頭の奥がジンとしびれてとろけていく。

大きな手は休まずに私の耳朶をなぞり、輪郭に触れ、首筋へと伸びていく。

くすぐったさともどかしさ、未知の感覚に肩が跳ねる私を決して逃がさない。


「素直だな」


小声でつぶやかれ、自然に滲む視界で見上げると、情欲の滲んだ目に見つめ返される。

溢れ出る色香に息を呑んだ瞬間、首筋に幾つものキスが落とされ、鎖骨を甘噛みされた。

彼の唇と指が触れる場所すべてが熱くて、何度も大きく息を吐く。

長い指が器用に私のカットソーを脱がせ、上半身が外気に晒される。

下着の上から胸に口づけられ、腰が揺れた。

漏れそうになる声を唇を噛みしめてこらえていると、下唇を甘噛みされて窘められる。


「……声を聞かせてくれ。いくら本人でも体を傷つけるのは許さない」


言い切った途端、下着を手早く取り外し、むき出しの胸を大きな手が覆う。

彼の指によって形を変える胸が恥ずかしい。

するとふくらみと胸の先端に交互に口づけられて、自分のものとは思えない声が漏れる。
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