花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
「結婚式は今週土曜日……今日が木曜日だから、明日ドレスを探しに行こう」


スマートフォンのスケジュールアプリを起動させた凛に誘われる。


「でも私、手持ちのドレスを着ていくつもりで……」


わざわざ彼らのために、お洒落や出費をしたくない。


「気持ちはわかるけど、負けたみたいで悔しいでしょ!」


半ば押し切られるように約束して、昼休みが過ぎていった。

翌日、いつものように仕事をこなし、順調に定時退社への目途が立っていた。

日中使用していた資料を戻すため、資料室に向かう途中で凛からメッセージが届いた。

どうやら恋人が発熱し、会社を休んで寝込んでいるそうだ。

独り暮らしで心配だから看病に行きたい旨が書いてあり、迷わず同意し返信した。

謝罪メッセージが再び送られてきたが、気にしないでと返した。

ドレスは一応探してくると付け足すと、謝罪のスタンプとともに迷ったらすぐに連絡をとメッセージが届き、優しい親友の心遣いに感謝した。

予定通りに定時で退社して、ファッションビルが立ち並ぶ場所へと向かう。

金曜の夜のせいか人通りも多く、街は賑わっていた。

幾つかの店に立ち寄った後、大きな交差点沿いの高級ブランドのショーウインドウに飾られた黒いドレスが目に映った。

照明の光によって紺色にも見えて、上半身に施された繊細なレースがとても上品だった。
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