花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
手が出る品ではないけれど、引き寄せられるように近づいて見つめていると、背後から「素敵ね」「いいなあ」といった声が聞こえてハッとした。
ドレスの真正面を陣どっているのに気づき、横にずれて振り返った途端、目にした光景に息を呑んだ。
「葵社長よ! カッコいい! 独身なんて信じられない」
「ホテルでハイブランドのレンタルドレスサービスを始めるんですって。友だちの結婚式のときとかいいわね」
「この間の雑誌インタビュー記事を読んだ? スーツ姿が素敵でね……」
女性たちのうっとりするような声が、耳を素通りしていく。
向かい側のビルに掲げられた大型液晶画面に映し出されていたのは、花束を贈ってくれた男性だった。
【葵株式会社社長へ単独取材】
画面上の字幕を見つめていると、鼓動がどんどん速まっていく。
やっぱりあの人は、とんでもない雲の上の世界の人だった。
当たった最悪の予想に心が沈み、現実に打ちのめされる。
社長じゃなければよかったのに。
逃げ出して思い出にすると決めたくせに、心の片隅でもう一度会いたいと願っていた、未練だらけの自分を思い知る。
ドレスの真正面を陣どっているのに気づき、横にずれて振り返った途端、目にした光景に息を呑んだ。
「葵社長よ! カッコいい! 独身なんて信じられない」
「ホテルでハイブランドのレンタルドレスサービスを始めるんですって。友だちの結婚式のときとかいいわね」
「この間の雑誌インタビュー記事を読んだ? スーツ姿が素敵でね……」
女性たちのうっとりするような声が、耳を素通りしていく。
向かい側のビルに掲げられた大型液晶画面に映し出されていたのは、花束を贈ってくれた男性だった。
【葵株式会社社長へ単独取材】
画面上の字幕を見つめていると、鼓動がどんどん速まっていく。
やっぱりあの人は、とんでもない雲の上の世界の人だった。
当たった最悪の予想に心が沈み、現実に打ちのめされる。
社長じゃなければよかったのに。
逃げ出して思い出にすると決めたくせに、心の片隅でもう一度会いたいと願っていた、未練だらけの自分を思い知る。