あしたのあたし
「は~、うまかったな、この冷凍食品」

「もう、冷凍食品のところ強調しなくてもいいじゃん」

ちょっとからかい気味にあたしの顔を覗き込んでくる高槻君。こういう茶目っ気があるところも可愛くて好きだったり。最後は「昼飯代も浮いたし最高」と、笑ってあたしのミスを許してくれた。


教室に帰るとユミが待っていた。

「ユミ、どうしたの?」

そうたずねると、ユミはちょっとだけ神妙な顔になって声をひそめてあたしに話し掛けてきた。

「マキさ、昼休みどこ行ってたの? 高槻君とお弁当食べに行ったのは知ってるんだけど」

「ユミ、そんな話聞いてどうすんの? さては彼氏持ちのあたしが羨ましいか?」

「そうじゃないって。もしかして、中庭とか行ってないよね?」

「うん、さっきまで中庭で高槻君とお弁当食べてたけど」

そう答えると、ユミの顔は見る見るうちに青ざめていった。何か問題があるのかと話の先を促すと、

「中庭ってさ、いい場所の割に生徒が寄り付かないじゃん? 何でだか知ってる?」

「え、知らないけど。何で?」

「タチの悪い先輩がよくいる場所なんだって。堂々とタバコ吸ったりしてて、ちょっとでも目に入った生徒は片っ端からボコってるって話だよ。しかもその先輩、裏でヤクザとつながってるって噂もあるし。豊川って名前らしいんだけど、とにかくヤバイ先輩なんだよ。今日はいなかったみたいだから良かったけど、もう中庭行かないほうがいいよ」

その話を聞いて、あたしも顔が真っ青になっていくのが分かった。
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