クールな君の甘さを知れば【※表紙絵変更しました】
「そりゃ、こんな顔にもなるかー…」
「こんな顔って?」
「ぅわっ?!」
「ごめん、驚かせたな」
バツが悪そうに隣に座った九条先輩に「ほんとですよ」とおどけて返した。
けれど心臓は正直なもので、バックンバックンうるさいほどに飛び跳ねている。
危ねぇ…こんなとこで感傷に浸ってる場合じゃなかった。
せめて九条先輩の前では…というか、知り合いの前ではこんな姿見せたくない。
今俺は、自分の意思でここにいる。
こうなるってわかってて、その上で誘いに乗ったのは他でもない自分自身。
だったら、ごちゃごちゃ考えてるのはもっとダセーわ。
もう一度鏡を見て、短く息を吸う。
さっきまでの感情を一旦放り投げ、思い切りシャワーを出した。
*
「長谷川くんは露天風呂行く?」
髪も体も洗い終えた頃、九条先輩もちょうどそのタイミングだったようでそんな声がかかった。
「はい。せっかくなんで」
温泉自体は普通に楽しみだったし、楽しまなきゃ損。
なんかもうそんな境地にいる。
「俺も一緒にいい?」
「許可なんかとってどーすんですか」
「なんとなくな」
そう言って笑う九条先輩の顔は、少し硬い。