クールな君の甘さを知れば

「だから、なるちゃんの家に行きにくくなっちゃったって話を………って、あれ?」



も、もしやこの声は……。



「…そんなこと考えてたのかよ。馬鹿じゃん」



「な、なななななるちゃんっ…!?」



恐る恐る振り向くと、やっぱりなるちゃんがいつも通り立っていた。



な、なんてタイミング…。



重い腰を上げてとぼとぼと玄関まで歩き、ようやく家の鍵を閉めた直後に現れるなんて。



しかも、独り言を聞かれてたっぽいし…。



そういえば、昨日も私の声聞こえてたよね?



「……地獄耳」



「は…誰が地獄耳だって?」



「ひぃっ…!」



ほら、やっぱり地獄耳……!!



こんっっっなに小さい声で言ったのに、ちゃんと聞取ってイラついてるもん…!



「…別に、地獄耳じゃないから」



とかなんとか言ってるけど、そんなわけな…



「…好きなやつの声だけハッキリ聞こえるってだけ。そもそも、海琴以外に興味ねぇし」



「っえ?」



そんなわけないと、否定する気満々だったのに。



「海琴の言うこと全部に耳傾けて、聞きこぼしたくないって思ってると自然に聞こえてくんだよ。だから、海琴限定で地獄耳ってこと」
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