逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 ワイトは湖の側にいた。

 まもなく夜が明けようとしている。
 しだいに王都の街並みが判別できるようになった。

 郊外に黒い塊が集結しているのが見える。

 バッハス軍だ。
 
 やがてじわりとそれが動き始めた。

 全軍が王宮に向かっていた。
 徒党を組んで王宮を目指していた。

「ははあん、やっぱりそうか、奴らは本当にやる気なのか」
 やたら暢気そうに言った。

 ワイトの後ろには、銀色に輝く巨大なものがあった。

 丸い形状で上から押しつぶしたような楕円の形をしている。それは、カライルが山から持ってきたあの摩訶不思議な物体だった。

「・・うん、もう間もなくだな」
 独り言ちて王宮を見る。

 一番高い所に突き出した物見の塔、その先端を凝視した。


          * * * * *

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