逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
新たな出発
 洞窟がしんと静まっている。    

 きのうまで、歓喜にわきかえっていた。
 バッハスの侵攻を食い止めてグリントールが勝利したとの一報が入ったからだ。
 しかもグリント―ル軍に死者は出なかったのだと。

「さすがはアーロン様です」
 ヴェンが感極まったように言った。
「この湖を決壊させると聞いたときは度肝を抜かれましたが・・」

 それが結局バッハスとの雌雄を決したのだと、勝利の決め手になったのだと国軍からの報告があった。

「あとは戦後処理ですね。ある意味でこれはなかなか難しい仕事だと聞いています」

「そうでしょうね。国内の戦禍の始末はもちろんだし、こうなってしまったバッハスとの交渉も大変でしょう」
「はい。それに今は国王陛下がいらっしゃいません。アーロン様とシュテルツ様にほとんどの重荷がかかってくると思います」

「・・そうしたら、アーロン様は当分ここには」
 言いかけて口をつぐんだ。
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