逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「彼は君を慕っている、口には出さないだろうがね。二年前もそうじゃなかったか」

 オルグは書類に目を落としていた。
 だがそこにある文字を追ってはいなかった。

「ほら、噂をすればだ」
「え?」
 シュテルツの視線を追った。

 現宰相補佐が書類を持って来ていた。
 彼はバツが悪そうに黙っている。

 しかしオルグが片方に寄って席を空けると、
「詳細を確かめていただきたい所があるのですが」
 書類を広げた。

 オルグがそれに目を止める。
 即座にうなずいた、そして筆を執って書き込み始めた。

「相変わらずだな、オルグよ」

「あ、いや、二年前と状況が一緒だったので、たまたまでございます」
 照れたように答えた。


          * * * 
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