逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「重傷者はそれなりの施設で看護させる必要がある。しかしそこからはお前の領分だ、俺の出る幕ではない」
 設備と医者を確保する、その体制を整えるのは政務の役割だ。

「・・その間に、俺は別の仕事があるんだ」
「別の仕事だと? いったいなんだ、それは」
「いや、まあ、それはそれなりの」
 言いさして口ごもる。

 アーロンは追及されるのを拒むように顔をそむけた。
 そのまま腰を浮かせて退出しようとする。

「あ、おい。いったいどこへ行くというのだ? こんなときに」

「湖だよ、山の湖だ。あれほどの規模で決壊させたのだ、その後始末が必要だろう?」

「また湖だと? アーロン、お前はいったい何度あそこへ行けば・・・」

 言いかけたシュテルツの声は空しかった。

 アーロンはあとも見ずにとび出していた。
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