逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 別宅のドアが開いた。
 中からソフィーが現れる。
 純白のドレスに身を包んだ彼女は息をのむほど美しかった。

 リズに介添されて石畳を歩く。

 両側には屋敷の使用人が並んでいた。
 執事を筆頭に家令や用人、ソフィーの警護役だったヴェン、大勢の侍女や下僕、果てはアーロンの側近もいる。

 彼らは花嫁が進む速度に合わせて会釈していく。それが伝搬して波のように続いていた。

「おめでとうございます」
 あちこちで拍手が起こった。

 本邸の玄関に、礼服をまとった麗人がいた。

 ホワイトグレーの、目が覚めるような衣装を着込んだアーロンだった。その彼がソフィーに微笑みかけている。

 ふだんあまり飾らない彼の、息が出来ないほどの姿だ。
 光沢のあるジャケットが鮮やかで、その内側にウエストコートを着込んでいる。胸元には同系色のタイが締められ、すらりとした上背に礼服がピタリと決まっていた。そして端正な顔で微笑んでいた。

 ア―ロンがソフィーを抱き寄せた。
 その肩先に顔をうずめる。

 その途端、うわーっと歓声が上がった。

 家人が心を込めた式が、始まろうとしていた。


          * * * 
< 342 / 463 >

この作品をシェア

pagetop