逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 先にそれを外したのはシュテルツだった。

 彼はふっとうつむいた。そして上げた顔には笑みが浮かんでいた。
 それはソフィーに向けられていた。

「ソフィー様、あなた様には・・」
 目のなかに、遥望としたものが宿っている。

「今後、このグリント―ル国において、重要な立ち位置に就いていただくことになるかと存じております」
 へりくだってはいる。しかし暗に諭すようなものが滲んでいた。

「・・え?」

「私はそう確信しているのです。その節は、なにとぞよろしくお願い申し上げます」

 そう言うと深くうなずいて見せた。

 最大限の礼を尽くして頭をさげる。

 ゆっくり上げたその顔には、言い尽くせぬほど晴れやかなものが浮かんでいた。
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