逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
国境での出来事
 ポツン・・ポツン・・、澄んだ水音が反響していた。
 目が慣れるにつれて辺りが見えてくる。

 負傷者は洞窟の凹凸を利用してあちこちに寝かされている。
 見える範囲で三十人ほどだろうか、意外に多い。
 こっちの会話が聞こえているだろうに、彼らはじっとしている。いったいどこの所属だろうか。

「彼らは、バッハスが越境して来たときに負傷したラクレス兵だ」
 デイズが言う。
「ああ、一か月前に起こったあの紛争だな?」

 それはヴェンも聞いていた。
 突然国境を越えて来たバッハス兵と乱闘になった。結果、四十数名が怪我を負ったあの事件だ。

「じゃあ、お前もそのときに?」
「いや、俺は半月前だ。王宮から国境へ偵察隊として来ていて・・」

「すると、紛争とは別の件なのか」
「ああそうだ。彼らはバッハスと格闘して負傷した。俺はそのあとで正体不明の奴にやられたんだ」
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