逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 うっとヴェンは口ごもった。

「・・それが本当なら、大変なことじゃないか」
「その通りだ」

 デイズの話が頭の中で入り乱れている。それほど衝撃だった。

 だが、そんな彼にふと、
「し、しかしデイズ、お前はよくそんなことを知っているな。王宮の兵だろう? 王都で暮らしていたくせに・・」

「ああ、言ってなかったっけ。俺はラクレスの出身なんだよ」
「・・ああ」
 前にそんな話を聞いたことがある。

「ここには親兄弟がいるから、ときどき帰って来ているし。それに俺は元々ラクレス領の兵だったんだ」
「ラクレスの、兵だった?」

「ああ。王宮の騎士にあこがれて志願したんだ、それで修行の甲斐あって王宮兵士には採用された」
 けっきょく騎士にはなれなかったがな、といって頭を掻いた。

「・・だが、それならだな」
 とヴェンは辺りを見渡した。
「ここだって、この洞窟だって危ないだろう? バッハスに知れてしまえばどうするんだ?」

「そう、一網打尽だな。戦える男がほとんどいない、負傷兵ばかりなんだから」
 仕方がない、とデイズは笑った。


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