逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
王宮の盟友
 王宮の政務室で、宰相のシュテルツが書類を見ていた。

 コツコツとノックがあって、アーロンが入ってくる。
「ああ、ちょっと教えてほしいんだが」
「教えろだって? いったいどうしたんだ」

「いや、夕べ珍しい客が来てな」
「・・ん?」

「ラクレス領の令嬢のソフィーという娘だ。それがあのケイネ伯の愚息のギースに連れられていた、街なかで」
 まるで引っ立てられるようだったと続けた。

「ラクレス領は今どうなっているんだ? 領主のラクレス公は、・・彼女の父親はバッハスとの国境の警備に当たっているはずだが」
「ああ、国境の警備隊だな。それがなぜか向こうとは連絡が取りにくくなっている。原因を調べているんだが」

「政務の方でもか? 実は軍でも同様だ。だから偵察隊を出したんだ。しかしその報告がまだ届いていない」
 ここ数日、まるで連絡網が遮断されているようだとアーロンは続けた。
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