逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
渡された密書
 そこには、
【先刻よりの情報を感謝する。我が軍はまもなく国境線を越える。ついてはラクレス隊の陣容、見張りの交代時間、所持する武器の種類・個数の詳細をお教え願いたい】
 とあった。

『や、やはりお前はバッハスの回し者だったのか』

 大男はひとしきり笑ったあとで、
『何をいまさら。とうにわかっておいでかと思いましたが。いかにもバッハスの者ですよ、それも参謀の一人ですよ、今はこんななりをしていますがね』

『・・! ちょ、ちょっと待ってくれ』
 青くなって辺りをうかがった。
『こんな話を誰かに聞かれたらどうするのだ』

 通路から外れているとはいえ、ラクレス兵があちこちを歩いていた。

 ギースは目の前の二階建てを指さした。
『この上に来てくれ。そこに父の執務室があるんだ』
『ほう、ケイネ伯のお部屋ですね』

 大男はギースに続いてギシギシと階段を上がった。
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