逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 夕方になって駐屯地に帰ってきた。
 はっとしてポケットをまさぐった。

 そこには、何もなかった。

【先刻よりの情報を感謝する。我が軍はまもなく国境線を越える。ついてはラクレス隊の陣容、見張りの交代時間、所持する武器の種類・個数の詳細をお教え願いたい】

 頭の中で文面が躍った。

 この国境に駐屯しているのはラクレス隊とケイネ隊だけだ。密書が誰宛のものか、一目瞭然だった。

 父ケイネ伯に相談した。ケイネは激高した。しかしこの失態は結局自分に降りかかってくる、彼も蒼白になった。
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