逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
託されたふみ
東の方角に王宮が見える。
いくつもの塔に朝日が射し込んで光っている。あそこで三十余年を費やしてきたのだと思った。
アーロンは侍女にかしずかれて出仕の支度をしていた。
このグリントールでは五十歳になると退職する決まりがある。それがあと半年後に迫っていた。ほろ苦い笑みが湧いてくる。
コツコツ、コツコツ・・。ふいに窓から音がした。
駆け寄ってそれを開ける。
一羽の鳩が窓枠からアーロンを見ていた。
ヴェンが放ったあの伝書鳩だった。
【過日のバッハス侵攻時の負傷兵多数が山の洞窟で治療。別件で負傷したデイズも同じく。ソフィー嬢が彼らを看護。追ってまた報告】
鳩の小さな足にはそんな文が付けられていた。
アーロンが瞠目した。
* * * * *
いくつもの塔に朝日が射し込んで光っている。あそこで三十余年を費やしてきたのだと思った。
アーロンは侍女にかしずかれて出仕の支度をしていた。
このグリントールでは五十歳になると退職する決まりがある。それがあと半年後に迫っていた。ほろ苦い笑みが湧いてくる。
コツコツ、コツコツ・・。ふいに窓から音がした。
駆け寄ってそれを開ける。
一羽の鳩が窓枠からアーロンを見ていた。
ヴェンが放ったあの伝書鳩だった。
【過日のバッハス侵攻時の負傷兵多数が山の洞窟で治療。別件で負傷したデイズも同じく。ソフィー嬢が彼らを看護。追ってまた報告】
鳩の小さな足にはそんな文が付けられていた。
アーロンが瞠目した。
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