黎明に君と。

ー春ー


 家を出て近くの堤防に登る。
ほんのりと熱い地面に腰を下ろし、手に持っていたラムネを置く。
少し力を入れて上から押すとビー玉が一気に落ちてシュワシュワと音を立てながら炭酸が上がってくる。
朝の漁を終えて迎えるこの時間が好きだ。

 この堤防は小さな村の大半を占める湖に面していて、その湖でシジミ漁をするのが仕事。
生まれ育ったこの田舎の村では20代が少ない。
もともと人口が減少していたところにIターンが増え、5つしたの学年からはたくさんの生徒がいたが、この学年は二人だけ。
学校に行く前はここで待ち合わせをして一緒に登校するのが日課だった。

「おはよう」
という声が聞こえたような気がして振り返る。
そんなわけがないと思うけれど
どこかに探してしまう。
今日は宿題が残っているからだろう。
ラムネを朝陽にかざし、キラッと光るビー玉をみて決意する。
缶から取り出し大事にポケットに入れていた封筒を取り出し、中身を確認する。
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