『苦しめてごめん・・』―消せない過ちを悔いる日々―
「嫌な過去のお話ですのに私たちのために話してくださってほんとに有難いことです。

 あなたはとてもやさしい方なんですね。

 それだけの仕打ちを根米さんから受けながら彼女のことを悪しざまにはお話されなかった。

 悔しくさぞかしお辛いでしょうに」


「いえ・・自分にも落ち度はあったので」


「あなたっ、私の感じていた不安が的中したわ。
根米さんは卑劣なことのできる人だったんですよ、やはり」


「そうだな。これでずっと私たちが望んでいた答え合わせができたというわけだ。
神尾さん、感謝します」


「お役にたててよかったです」


「あなたから聞いたということは根米さん本人はもとより外部には洩らしませんからご安心を」

「助かります」



 俺たちはホテルの前で別れた。

 根米と相手の息子が結婚するのかしないのか、俺には知る由もないが
ひとつだけ、老夫婦にとっての良いことはできたわけだ。


 根米の腹黒を知っても別れないくらいその男は根米を愛しているかもしれないし、
分別のある選択ができるくらいには常識を持っている男かもしれない。


 俺はつまらない人間だ。

 俺もいつかは俊哉のように好きな女性を暖かく包み込めるような
人間になれるだろうか。


 ホテルからの帰り道、浮かんだのは憎んでいたはずの根米菜々緒の事などではなく、
見てはいないが想像で見える、俊哉に寄り添ってしあわせそうにしている友里の姿だった。


 皇紀がそんな風に心新たに友里を想っていた頃からほどなくして、
郷里に暮らす友里は新しい命と出会い俊哉と共に喜びを分かち合った。


          ◇ ◇ ◇ ◇

 友里親子は母子共に過ごせる個室に入院していた。


「友里、お疲れ様。俺たちの・・俺の子供をありがとう」


「ううん、私こそ俊哉に大切な命をもらったの。こちらこそありがとう。俊哉・・」

「ン?」


「堕胎した私の赤ちゃん、生きたまま堕胎したんじゃなかったの。
たまたまだけどあのタイミングで心音が止まって、それで堕胎したんだ。
こんな大事なこと黙っててごめん」


「友里、話してくれてありがとう。良かったよ。

 あちらに逝った子が故意に堕胎されたんじゃなくて。
 かわいそうだもんな。 

 それに友里がそんな罪を背負っていかなくて済んで、ほんと良かった」


 そういうと俊哉が友里の手を取った。


 友里は俊哉の手の先からじわりと暖かいものが流れてくるのを感じた。



 俊哉のやさしさが身に染みて友里は万感の想いで胸がいっぱいになり
喜びと苦しさがないまぜになって、涙が止まらなかった。


―――――――――― おわり――――――――――


最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

普段バリバリの恋愛ものはほとんど書かない(恋愛要素は少なめ)こともあり、
Berry's Cafeさんは敷居の高い投稿サイトでした。

ですが今回、第7回ベリーズカフェ短編小説コンテスト「アナザーベリーズ」に
エントリーできそうなことから掲載させていただきました。

こちらの後は「I Miss You」というある一組の夫婦の軌跡を描いたお話を
投稿させていただこうかなと考えています。(恋愛要素少なめですが含)

読んで頂けましたら幸いです。設樂理沙 ( ꈍᴗꈍ)❦
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