悪役令嬢なのに、完落ち攻略対象者から追いかけられる乙女ゲーム……っていうか、罰ゲーム!~前世から腐れ縁なちゃっかりヒロインに、逆ハーエンド押し付けられました~

03 箱の中

 私が慌てて入った部屋の前を大きな足音が通り抜けて、近くで立ち止まった。

「おい! そこのお前!」

「……はい? どうか致しましたか、レイジブル様」

 近くの使用人らしき人が彼の名前を呼んだ声がして、私は身が竦む思いだった。ジュルジュ・レイジブルは、ユーザーから人気も高かったワイルド系騎士様だ。

 彼は出会ったばかりには荒っぽい態度なんだけど、好感度が上がるにつれ対応に糖度が高まると言う、いわゆるギャップ萌えを楽しむ人も多かった。

「ルメッツァーネ公爵令嬢は、見なかったか? 先ほど、裏門から城に入られたと連絡があったのだが……」

「申し訳ありません。私はレイラ様は、本日お見かけしておりません」

 私は彼らの会話を聞きながら、遠くから荒っぽい足音が迫ってくるのを聞いて、身を隠した選択は間違っていなかったとホッと安心した。

 良かった。ジョルジュって好感度が高くなり過ぎると、執着のあまりヤンデレのような行動を取るようになるのよね。

 きっと、私が城へ来れば、知らせるように言っていたに違いない。

 荒っぽい足音は近くから去っていって、私は心から安堵した。

「……レイラ。久しぶりだね」

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