Moonlight−月光−
わたしはローファーを脱ぎ、上履きに履き替え、自分の教室へ向かう。
2年生の教室は校舎の3階にあるため、階段を上り始める。
そこで、ポンと肩を一回、優しく叩かれた。
この学校でわたしにそんなことをしてくれるのは一人しかいない。
「おはよう、心乃(ここの)」
くるりと振りかえるとそこには階段を感じさせないほど長身の男子が立っていた。
彼は鈴石阿斗(すずいしあと)。
わたしの中学校からの幼なじみ。
女子なら誰でも憧れちゃうような二重に、茶色味のかかった髪の毛。
神様が一切の狂いなく創りあげたその顔立ちは本当にかっこよくて、入学早々、女子の中で密かに話題に挙がったほど。
その人気は2年生になった今でも続いていて、今か今かと女子は告白するチャンスや友だちになるチャンスを狙っているのだとか。
阿斗は基本無口で無表情だけど、困っている人を見捨てたりしない。
だから、女子だけでなく、男子や先生からの信頼も厚いんだ。
…こんな冴えないただの幼なじみに毎日声をかけてくれるぐらい。