自殺教室
外へ
教室の後方で一浩はたしかに自分の首にナイフを突き立てた。
その場に倒れ込んだところまではわかったけれど、静かになって視線を向けてみるとそこに一浩の姿はなかったのだ。

床にあったのは灰だけで、それも一分もしない内に消えて言ってしまった。


「今のはなんだったんだ?」


一浩の体が消えていく一部始終を見ていた豊が驚愕の声を上げる。


「わからない。消えたよね?」


奈穂が一浩が立っていた場所に近づいても、そこにはなにもなかった。
あのナイフも、いつの間にか教卓の上に戻っている。


「どういうこと!? なんで一浩はいなくなったの!?」


半分パニック状態の珠美が座り込んだまま叫び声を上げる。
すぐに豊がかけつけた。


「大丈夫。きっと、大丈夫だから」


珠美を慰めながらも、豊自身もなにが起こったのか理解できないままだった。
どうして一浩の体が消えてしまったのか、わからない。

でもこの教室ではありえないことばかりが起こっているから、それを受け入れるしかなさそうだった。
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