『愛が揺れるお嬢さん妻』 かわいいひと
 これからは大っぴらに会えるというのに。

 会いたいと思えなくなってしまった。

 自分でも分からない感情。


 会いたかったのは、一度だけでも会いたいと思ったのは
さんざん大切にしてこなかった苺佳だったのだ。


 忘れてくださいと言われたが俺はこの先何を忘れても
苺佳のことは忘れられないだろうと思う。


 苺佳と同じ苦しみを味わってもらいたいと言ってたが、
もう味わってるよ、苺佳。


同じ体験をこの時俺はしていた。


 好きだった苺佳の気持ちが俺から離れてしまい、彼女の心は
あのイケメン野郎のものになってしまったのだから。


 俺は苺佳を裏切ったけれど、苺佳は俺を裏切ったわけじゃあない。 
 

 裏切り者の俺を捨てただけ。


 せめてあの綺麗な顔をした男と苺佳が知り合い心を通わせるようになる前に
俺が美羅と手を切っていたなら少しは状況が変わっていたのだろうか。



 俺との結婚を喜んでくれていた苺佳。


 取り返しのつかないことをしたと、しみじみとその感情に囚われ、
胸の中がポカリと空洞になってしまったことに気付いた。



 いつの日か、誰かこの空洞を埋めてくれる誰かがいるのだろうか。
 カラッポの心で生きていくって辛いものだな。

 


 英介さんと立ち話した後、近くで待っていてくれた瑤ちゃんと一緒に
リハビリ入院している母の病室に向かった。



 いろんなことが落ち着いたらひとまず瑤ちゃんの家で暮らすことになってる。


 瑤ちゃんに『家においで』って言ってもらって。


 『支えるから』っていうのは言葉だけじゃなかった。
 瑤ちゃんは有言実行できる人だった。
 

 英介さん、泣きそうな顔してたな。
 なんで? 

 これからは誰からも非難されず大好きな美羅さんに会えるというのにね。 


 そうそう、つい英介さんには言い忘れてしまったんだけど、
 山波美羅という女性はものすごくタフな女性のようでご主人がいて
英介さんとも付き合っていて、その他にもモデルの恋人がいるようなのだ。


 私は調査報告書で知ったんだけど。

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