『愛が揺れるお嬢さん妻』 かわいいひと
 

番外編  瑤視点

◆大林は娘の通う幼稚園の入園式で医師と患者として面識のあった古家苺佳を見かけた時に、珍しく自分からコミニュケーションをとりたいと思い、積極的に声を掛けたのだが声の掛け方を間違えてしまったようで、目の前の可憐なその人に半泣きで抗議され、頭を抱える大林だった。悲しいかな大林にはこのようなシチュエーションで苺佳に対してどう振舞えばいいのか、声の掛け方が分からなかったのである。
 何故なら、大林にとってこのような体験は生まれて初めてのことだったからである。
 ・・というのも、大林瑤林はインターセックス(性分化疾患)という身体的性が一般的に定められた男性・女性の中間、もしくはどちらにも一致しない状態で産まれ落ち、出生届を出せる期限ぎりぎりまで両親は瑤林の性別をどちらに決めるか悩みに悩んだという。どちらかを選ばなければならない、どちらかを選べる選択肢、そのような状況から男子として生きてゆくほうが世間を生き易いのではないかと両親は考えた。その為、瑤林は急死した姉の子比奈を引き取るまでは男として暮らしていた為、女性とどのようにして友人関係になれるのか、はじめの第一歩が分からなかったのだ。

◆保育園の入園式の途中で『良かった』とひとりごちた大林。入園式が平日だったせいか母親だけの参加がほとんどだったからだ。比奈に寂しい思いをさせずに済んだ。そうほっと胸を撫でおろした瑤林には家庭の事情というものがあった。

 両親は父親が病気で入退院を繰り返していた為母親の手が借りられず、
ちょうど研修医期間も終了し、医師としての勤め先も決まった瑤林が
働きながら比奈を育てることになった。


病院では男性として戸籍上の名前で働きながら、保育園では取り敢えず
2年間誰一人知り合いのいないことをいいことに、比奈の母親という設定で
保護者として振舞うことに決めた・・という経緯がある。
< 119 / 123 >

この作品をシェア

pagetop