『愛が揺れるお嬢さん妻』 かわいいひと
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 今まで出張が早まるなんてことはなかった。


 一応連絡を入れておくか、とも考えたが夕飯は駅弁を買って済ませるのだし、
深夜になるわけでもない。


なくてもいいだろう、俊介は連絡を入れない選択をした。


母子手帳の件から、俊介は何気に理恵の言動を観察するようになっていた。


 普段から理恵との会話というものはどこそこの有名なレストランで友達と食事したら

すっごくおいしかったとか、友達に勧められてワンピースを買ったの、

素敵でしょう~とか、思い起こしてみれば心に響くとか、通じ合うとか、

優しい気持ちになれるような会話は皆無だよなぁ~と今頃再認識するぼやっとした

俊介だった。





 そして、いきなり帰ったら理恵がどんな反応をするだろう? との
答え合わせみたいなものが知りたい、というようなことも併せて考えていた。
 

 就職してから、独身者の多い支社では週末になると同じ会社の同僚同志の合コン、
社員各々の知り合い繋がりの看護師さんたちとの合コンなどが度々開かれていて、
そんな中俊介も毎回ではないけれど、誘われれば付き合い程度の感覚で
ちょこちょこ参加していた。




 他の同僚のように真剣に交際相手を見付けようとしてのことではなかった。


 俊介には幼いころから決まった許嫁がいたからだ。


 周囲が決めた結婚相手苺佳は許嫁というふうな形になっていたが、もちろん
本人同士の意志確認もあっての上でのことで、英介自身不満はなかった。



 家柄もよく、ちゃんとした教育も受けており、何より苺佳自身に人間的魅力が
備わっていた。



 愛くるしい見た目においても、温和でやさしい内面においても、すべからく
この縁談には満足していたのである。


 まだ始まっていない、結婚に向けての交際も楽しみにしていた。


 その為、合コンや飲み会に出ても自分から積極的にいくことはなかったのだが、
当初より俊介をロックオンしていた女性がいて、まんまと嵌められたのだ。
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