『愛が揺れるお嬢さん妻』 かわいいひと
「完膚なきまで叩き潰す、と言いたいところだが、まぁひとまずは
会社を辞めてもらい、あちらの会社との付き合いは今後控えるというところかな。


これまでの付き合いの長さ、いうて眞奈の父親だからね。

それ以上の嫌がらせや妨害はしない」



「お父さん、私もそれでいいと思います」


 主張するべきところは主張し、さりながら相手憎しとやり過ぎないところ、
私は改めて父をりっぱな人だなと感慨深い気持ちでいっぱいになった。


「苺佳、そろそろ家を出る準備をするといい。

離婚のことは弁護士に一任して上手く取り計らうよ。

離婚に向けての話し合いの場には一切出なくていいから。

これから先、楽しく暮らすことだけ考えたらいい。

まだまだ人生先は長いんだ。

いいことが待ってるさ」



 きゃぁ~、英介さんと対峙せずに別れられるなんてありがたやー! 

もう夫と向き合うのだけが憂鬱だったのよね。


 できる父を持って感謝、そしてお父さんに感謝。

 両親に英介さんとのことを話に行った後、少しずつ荷物を段ボールなどにまとめて
自宅脱出の準備を始めた。


 英介さんのいない週末に赤帽さんに荷物を取りに来てもらい、
それから眞奈を連れて電車に揺られ実家に戻った。


 私は『実家に帰ります』とだけメモを残し、暮らし慣れたお気に入りの家を
あとにした。


 しばらくは実家でお世話になり、眞奈と住む家が見つかり次第そちらに移るつもり。



――この後、英介が苺佳や眞奈と会うことは叶わなかった。


『なんてことだ、俺としたことが』



 そうつぶやく英介が、昨日のうちに苺佳が娘を連れて実家へ帰っていたことを
知ったのは月曜の朝のことだった。



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