『愛が揺れるお嬢さん妻』 かわいいひと
『実家に行ってきます』ではなく『実家に帰ります』と残された苺佳の文言に、
そういうことだったのかと英介が気付くのは少し後のこと。


 苺佳に連絡を入れると、母親の体調がすぐれずしばらく実家に滞在するとのことで、
英介は快く了承した。 


 一方苺佳の父親は、娘苺佳の離婚をスムースに進める為と予定を変更することになった
合併の話をスムースに進める為、しばし多方面にわたり奔走した。


 そしてなんだかんだと多忙な苺佳の父親が影山家の面々との面談を
セッティングしたのは、翌月の半分を過ぎた頃となった。


 古家氏は、自分の方はずっと右腕となり自分の力になってもらっている遠縁の村元に
同席を頼んでいた。


 対峙するにあたって来てもらったのは英介の父、影山徹氏と兄の恵介、
そして古家製紙(株)の社員でもある英介の3名だった。



 影山コーポレーションの社長である徹氏とその長男の恵介は直近で出ている合併の話が
いよいよ本決まりになり、まずは親戚筋の自分たちが一番手に決まったというような朗報を
この度聞かされるのだろうと両名の表情は明るかった。



 そして英介はというと影山家の息子とはいえ、現在は古家製紙(株)の社員、
そしてゆくゆくは古家氏の跡を継ぐ者である為、父や兄とは若干違った心持で席に
着いていたのだが。ふと英介は違和感を感じた。



 それは座っている面々の席の位置だ。所属している会社別ではないということに。



『考え過ぎなのか?』


そんな風にも考え直したりしていると、古家氏が口火を切った。


「お暑い中、影山さんたちにお越しいただいたのはいろいろこれからのことで
大きな変更が生じてくることになるからです」


「と申しますと、例の合併の件でしょうか?」

 親父が呼応するかのように訊いた。



「以前それとなくはお伝えしていたので、本来なら合併するにあたり縁戚にあたる
影山コーポレーションさんには1番に入っていただこうかと思っておりましたが・・」
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