辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました
悪意の色
 故郷を離れて初めてできた友と別れてからも、寂しさに浸る余裕はなかった。

 最初は三百人いた候補者も、ゴーレム事件を経て三十人までに減っている。

 激減した候補者たちだが、彼女たちにとってはここからが勝負だった。

「我が身かわいさに逃げ出すような者に、エモニエの国母が務まるはずがないわ」

 デルフィーヌの辛辣な物言いに、リティは少しむっとする。

「自分を守れなければ、なにも守れないのよ。逃げることは恥ではないと、父や兄も言っていたわ」

 大切なのは生き残ることだと、リティは家族から繰り返し教えられている。

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