『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
クリスマスデートと1カット

12月25日、聖なる日。

恋人がいる人たちは、この日を待ち遠しくしているだろう。
ううん、そうじゃないよね。
一年中、毎日がハッピーな日なのかもしれない。

クリスマスに年末年始。
一年の中でもひときわ特別感のあるこの期間に、桃子はとある準備を進めていた。


「お母さん、匠刀が来たら呼んで」
「まだ用意してなかったの?」
「ネイルに時間がかかっちゃって」
「もう来るんじゃない?約束の時間、9時でしょ?」

母親がリビングの時計を確認する。
今日は午前中だけ鍼灸院があるため、既に白衣姿。

匠刀は朝が弱くて、学校は遅刻常習犯みたいな奴だけど。
デートの日は、1度も遅刻をしたことがない。

時計は8時45分を示していて、そろそろあいつがやって来る頃だ。

心臓に難がある桃子は、体の病変が分かるように、普段はネイルをしないようにしている。
心臓病の人は健常者より少し赤みがかかっていて、それが赤黒く色が変化すると、心臓に支障をきたしている目安になるからだ。

洗面所で歯磨きをしていると、玄関から『おはようございまーす』と匠刀の声が聞こえて来た。

「桃子~、匠刀くんが迎えに来たわよ~」
「はぁ~~~いっ!匠刀ごめーんっ、あと5分だけ待ってて~」

洗面所から廊下に顔を出し、玄関の方へ声を張った。

「上がって待ってて」
「あ、ここで待ってます。桃子~、ゆっくりでいいから~」

焦ると心臓に負担をかけるから。
匠刀は急かさないようにと、気遣って声をかけて来た。
そして、玄関に腰を下ろして、スマホを弄り始める。
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