『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
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「じゃあ、ちょっとだけ触らして」

そう言った彼は、再びキスをして来た。

私が無理やり言わせたようなものだし。
私が無理やりそうするように仕向けたようなものだけど。

それでも、ちゃんと匠刀を好きでいる今を思い出にしたいから。

静かに目を閉じて、彼が目の前にいることを全身で感じる。

何度も角度を変えて啄められて、次第に深いキスへと変わってゆく。
甘く蕩けてしまうほど、キスにのまれて。

体に力が入らなくなって来た頃、そわそわっとセーターの中に匠刀の手が入り込んで来た。

生きているうちに、経験できるとは思わなかった。
私には、夢のまた夢の世界で。
こういうことは、私の世界には存在しないと思ってたのに。

匠刀といると、それらが夢でなくなってくる。

いつだって私の願いを叶えてくれるのは匠刀で。
私が、他の女の子と同じようなこともできるんだと、教えてくれる。


ごめんね。
さすがに素肌にセーターだけじゃ冷えるから。
中にTシャツ着てて。

色気もなにもなくて、本当にごめんね。

今が夏だったらよかったのに。

「んっ…」
「ごめんっ、痛かったか?」
「……ううん」

優しく触る匠刀の手に、思わず声が漏れてしまった。

しらけさせてごめんね。
こういうことに慣れてないから、何が正解なのかも分かんない。

物凄い速さで心臓が動いてるけど、自分自身で納得してるからなのかな。
破れるような、激しい痛みはしないよ。

「ちょっと、たんま」
「ッ?!」
「触るだけじゃなくて、見たくなるから、これ以上煽んな」
「っっ、……こんなぺたんこなのに、見たくなるんだ」
「そりゃあなるだろ。好きな子なんだから」

『好きな子』
これ以上、嬉しい言葉はないよ。
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