『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

『モモちゃん』

自己紹介の時に、桃子と書いて『とうこ』と読むと挨拶したが、それと同時に『とうこ』ではなく『モモ』と呼んで下さいとお願いした。

桃子(とうこ)』と呼んでいいのは、両親と匠刀だけ。
匠刀の前から消えるように逃げて来たのに、桃子の中では未だに匠刀は特別な存在のまま。


私は狡くて利己的だ。

一方的に匠刀を振るみたいにして、一切の連絡も断ったのに。
彼との赤い糸が切れないように、計算した。

『バイバイ』とは言ったが、『さようなら』とは言ってない。
『ありがとう』とは書いたが、『別れて』とは書かなかった。

大好きで、とても大切な人だから。
いつか、縁があったら……会えるんじゃないかと、心の片隅で思ってしまう。

新たな人生を歩むために自分で決めたことなのに。
彼にもっと自由な人生を歩んで貰いたくて突き放したのに。

今はまだ、心の全てに彼が刻まれている。

聖泉女学院に通う子たちは、心に寄り添う術を身に着けている。
心が傷だらけの桃子は、そんな彼女たちに救われたのだ。

「モモちゃんが通ってた高校って、偏差値高かったでしょ」
「……うん。偏差値70くらい?」
「高っ!!」
「でも私は、特進コースじゃなくて理系だったから、普通科全体なら中の上くらいの成績だったよ」
「何言ってんの!70あれば、上の上だって!!」

夏帆ちゃんは勉強が苦手らしい。
特に数学は苦手みたいだけど、この学校は心を育てることが第一になっているから、勉強はそれほど厳しくないらしい。
それでも、大学へと進学を希望したり、提携する海外の大学に留学希望する人向けに、習熟度別授業もある。

< 126 / 165 >

この作品をシェア

pagetop