『オーバーキル』これ以上、甘やかさないで

チラッと見せてくれたスマホの画面。
だけど、カフェなんてどこでもいいんだよ。

『すぐ座れそう』という言葉に、彼の優しさが込められていると気付いた。

暑い中、席が空くのをずっと待たせたくないという彼の真意を。

「匠刀」
「ん?」

スマホのナビ機能でお店に向かいながら、私の呼びかけに振り向いた彼。
『どうした?』みたいな顔をして、足を止めた。

「気持ち悪いか?」
「……ううん」
「腹が痛い?」
「…ううん」
「頭痛か?」

そうだ。
彼はいつだって、私の体調不良を一番に気にする。

今もそう。
変に呼び止めたみたいになってるから、心配そうに覗き込んで来た。

「4年前の夏祭りの日に、私、具合悪くなったでしょ?」
「……ん?」
「夏祭りの会場から、抱えて自宅まで運んでくれたのって、匠刀だった?」
「何言われんのかと思ったら、何だよ。今さら聞かなくても」
「答えてよ」
「あ?」
「私には、すごく重要なことなんだからっ」

繋がれたままの手。
汗ばんでベタベタで気持ち悪いのに、今はぎゅっと握り返して欲しい。

「そうだよ、俺だよ。ってか、いつも運んだり介抱してんの、俺じゃん」
「っっ…」

なんだ。
そうだったんだ。

やっぱり、私の体調の変化をいち早く気付いてくれるのは匠刀なんだ。

虎太くんだと疑わなかった4年間なのに。
今は、匠刀だったことを知って、安心しきってる。

「もっと早くに聞けばよかった…」
「はぁ?……何なんだよ。っつーか、クソあちぃから歩くぞ」
「……うん」

クイっと引き寄せられた右手。
私のドキドキが、匠刀に伝わればいいな。

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