王子は私のモノなんです!
ハズレの王子、そう呼ばれた俺は親に疎まれ使用人には馬鹿にされた。


傷つくことをもうやめた。
傷つくだけ無駄だからだ。


努力する意味もわからず与えられる食事をし、時間が来たら眠った。遊ぶ事もしなかった。
心が死んでいたのだろう。
否、きっと今も死んでいるのかもしれない。


真っ赤な髪と琥珀色の瞳を持った彼女と出会ったのは10歳の時だった。
公爵家の娘である彼女は、公爵家が“力を持ちすぎない為”にハズレ王子と婚約しなくてはならないことを不満に思っていた。

彼女は何でも持つ資格があり、しかし彼女は何も持っていなかった。

何でも持てる彼女は、それが最後まで残らないことを知っていたから何も持たなかったのだ。
何故なら彼女は家の“道具”だったから。
俺は道具にすらなれなかったが、彼女は自分の価値を知っていた。

それなのに与えられた役目は、家が力を持ちすぎない為の結婚で。
家にもたらされる実益はなく、周りからも不要な俺を押し付けられた令嬢。
そんな彼女は、俺を選ばされたせいで周りからハズレくじだと馬鹿にされた。

傷つくことをやめた俺はただ色のない世界で彼女を見ていた。
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