心の中だけうるさい私はウチの坊っちゃんが可愛くて仕方ない
「両親も恋愛結婚だし、ブラゴブォリン家は個で十分成り立ってる。政略結婚する必要がないなら、俺はイメルダしか選ばない」
「そんなこと、まさか」
「両親からの許可は出てる。好きなんだ、ずっとずっと好きだった」

 体を繋いだまま、真っ直ぐに伝えられるその言葉。

 
「受け入れて、くれないか」

 立場を考えれば頷くなんて許されないが、それでも。

「はい」

 いつだって私の答えは、肯定しかないのだから。


 淡々とした声しか出なかったはずの私の喉からは上擦り掠れたような声が出る。

 けれど、ちゃんと聞いてくださっていた坊っちゃんは、まるで太陽のような温かい笑みを溢されて。


「~~~ッ、お坊っちゃまぁぁぁんっ!」
「待て、その呼び方はなんか色々まずい!というかちゃまはやめろって言ったろ!?」


 やめろ、と言った坊っちゃんは、どこか少し照れ臭そうに視線を外して。

 
「……ルーペルト、だ」

 ポツリと呟かれた名前にごくりと唾を呑む。
 ずっと坊っちゃんと呼んでいたのに、名前をだなんて。

“おこがましい”

 そう思うと同時に、呼んでみたくて堪らない。
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