最推しと出会えた日
最推しと出会えた日
生まれてから今までの16年間、一度も恋をしたことが無かった。
私は推しさえいれば生きていけるってずっと思っていたの。
そんな私、本栖茜(もとす あかね)は1か月前にはじめて気になる人ができた。
まさかリアルの世界で好きな人ができるなんて思っていなかったから、どうしていいかさっぱり分からなくて。
その人と会えるのは毎朝の通学電車に乗っている時だけ。
好きになった相手の人は同じ学校の3年生、更科優希(さらしな ゆうき)先輩。
優希先輩はとても人気があって、私なんかが声を掛けていい存在の人じゃないのは百も承知。
でも人気があるからって言うだけで好きになったんじゃないの。
好きになったきっかけは、私とお揃いのキーホルダーを優希先輩も付けていたから。
このキーホルダーはとってもレアなんだよね。
私の大好きな推しのバンドのライブ記念グッズで、ライブ当日の物販でしか手に入らないキーホルダーなの。
そのキーホルダーを優希先輩が持っているのを見かけて、それからずっと気になっていて。
このキーホルダーを持ってる人に出会えるって、運命じゃないかと勝手に思っているんだけど。
あの時のライブの話をしたいな、あの時の感動を共有したいなって思うけど怖くて声なんて掛けられない。
毎朝同じ時間の同じ車両で見ているだけ。
でも、それだけで幸せだった。