自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
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少し汗ばむ陽気の中、建国祭が始まった。
王都の街は、早朝だというのに沢山の人々の活気に溢れ、お祝いの言葉を言い合っている。広場の通りには露店も出店され、子供達が楽しそうに走り回り、笑顔で溢れていた。そんなお祝いムード一色の中、グランツ様と共に気を引き締めながら巡回を行っていた。しかし、人々の笑顔に引っ張られるように、引きしめたはずのリリアーヌの頬が緩む。
「グランツ様、朝から凄い活気ですね。皆楽しそうです」
「ああ、そうだな。しかし、こんな時に仕事をさせてしまってすまない」
グランツ様の謝罪の意味が分からず、リリアーヌはコテンと首を傾げた。
ん?
もしかして、このお祭り騒ぎの王都を楽しめない事を言っているのかしら?
「グランツ様、私は今こうしてグランツ様の隣を歩いていることだけで幸せです。むしろグランツ様の隣にいられるのであれば仕事で良かったと思います」
力説してから微笑むと、グランツ様がフイッと視線を逸らし、口元を右手で覆った。
「一緒に歩いているだけで幸せなのは俺も一緒だ。嬉しいのだが、外でそういうのは……抱きしめたくなるので止めて欲しい」
口を覆い、視線を逸らしたままのグランツ様の表情は確認出来ないが、耳が赤くなっているため照れていることが窺える。
うそ……グランツ様……。
それを見たリリアーヌの顔まで思わず赤く染まっていく。
二人のせいで広場の一角に、何やら甘ったるい空気が流れた。
そんな仲睦まじい二人の姿を見て、街の人々は温かい目を向けた。今や二人は街でも有名なおしどり夫婦。どんなにイチャつこうが文句を言う輩はいない。そんな二人に人々は声を掛ける。
「団長様、碧青の騎士様。良かったらこれ持っていっておくれよ」
渡されたのは焼きたてのパンだった。袋から香ばしい香りが漂っている。
「あっ、こっちのも持ってお行き」
「いや、俺達は仕事中……」
グランツ様がそこまで言葉にしたが、有無を言わせぬ動きで露店の店主達は食べ物や小物を次々に手渡してきた。グランツ様は「仕事だと言っているだろう」とブツブツ言っているのが聞こえてきたが、人々の笑顔を見て口角を上げている。その様子を見ながらリリアーヌは平和だなと思った。
どうか無事に建国祭が終わりますように……。