自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!

 いつの間にか二人だけとなっていたホールの真ん中でグランツ様と見つめ合っていると、歓声と拍手が鳴り響いた。二人のダンスへの称賛の声に、恥ずかしくなったリリアーヌはグランツ様の胸に顔を埋めイヤイヤと顔をこする付けると、回りで見ていた男性の顔をが赤く染まっていく。

「可憐だ……」

「美しく可愛らしい」

 そんな男達の視線から守る様にグランツ様が私を抱きしめてくれた。それが嬉しくて、グランツ様の背中に手を回した時だった。ガシャーンという大きな音が大広間に響き渡った。リリアーヌはすぐにグランツ様から離れると、ローズ様の前に立ち、回りを警戒した。緊張感が高まる中グランツ様に視線を向けると、グランツ様はドミニク殿下を守る様にして剣を抜いていた。二人の身のこなしと、切り替えの早さに回りにいた人々が唖然とする中、一人の少女が震えながら立っていた。その少女は新人の侍女のようで、真っ青な顔をしながら落としてしまった皿を見つめていた。

 それを確認したリリアーヌとグランツは頷き合うと、警戒を解いた。

 良かった。

 ふーっとリリアーヌは息を吐き出した。

 しかし皿を落としてしまった侍女は、この世の終わりの様な顔をして震え続けていた。このように大きな式典での失敗に、体が動かなくなってしまったのか、硬直したまま蒼白な顔をしている。

 可哀想に……。

 リリアーヌはグランツ様とハンドサインで会話を始めた。そしてローズ様をお願いすると、皿を落とした侍女の元へと向かった。

「大丈夫ですか?」

 そっと侍女の手を取ると、その手は冷たく小刻みに震えていた。声を発することも出来ない様子の侍女の背中をゆっくりとさすりながら、深呼吸を促した。ゆっくりと呼吸を繰り返すと、少しずつ平静を取り戻したのか侍女が徐に頭を下げた。

「も……申し訳ありません。このような席での失敗……許されることではありません」

 侍女の震える声だけが大広間に響く。




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