自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!

 その時、近くで剣の鍛練をしていた騎士の手からすっぽ抜けた模造剣がリリアーヌの所へと飛んできた。グランツやカイス達からは死角となっていて、模造剣が飛んできていることに気づいていない。リリアーヌは咄嗟に前に出ると、クルクルと飛んできた模造剣に手を伸ばした。パシッと音を立てて高い位置で模造剣を手にしたリリアーヌはそのまま『ブンッ』と模造剣を振り降ろす。それを見ていた騎士達から「おおーー」と言う声が湧き上がった。

 リリアーヌは首を立て付けの悪い扉のようにギギギっと動かしながら、グランツの方へと顔を向けると、目を見開いたままのグランツ様と目が合った。

 やってしまった……。

 固まったままのリリアーヌからサラが模造剣を奪うと、上から下に振り降ろした。

「辺境伯領では女性も剣を持ちます故、これぐらい剣を扱えて当然です。王都では普通で無いようですが」

 カイスが納得しながら声を漏らした。

「辺境伯領の女性って凄いんだな……」

 サラの持つ剣を見ながら、騎士達も驚愕したように頷いていた。

 何とかごまかせたかしら?

 サラのフォローに感謝しか無い。

 サラ、ありがとう。

 チラリとサラを見ると、微かに口角が上がっていた。

 サラ姉様!今日から私は心の中であなたを姉様と呼ぶわ。



< 33 / 140 >

この作品をシェア

pagetop