自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!

 この方はグランツ様の元婚約者でローズ・リスト様。

 以前見かけた時よりも更に美しさに磨きが掛かり、妖艶な色香を身につけていた。

「ローズ・リスト様……」

「あら、私を知っていて?まあ、そうよね。グランツ様の元婚約者ですし、知っている人も多いわよね」

 そう言って手に持っていた扇を広げ口元を隠した。扇で顔を隠してもなお、ローズ様の魅力が損なわれることは無い。むしろ表情が見えなくなってしまったことで、扇の奥でどんな表情をしているのか詮索したくなる。その扇を奪い、その素顔を見てみたいと思わせるような、そんな不思議な魅力のある人だった。

 やはり美しい人だ。

 遠目に見ていたときも美しいと思っていたが、今はあの時以上に美しさに磨きが掛かっている。ローズ様の美しさに魅了されていた所で、頭上が陰った。雲でも出てきたのだろうかと上を見ると、空は晴れ渡っていた。

 おかしい、何故ここだけ?

 令嬢達がこちらを凝視しているため、リリアーヌは令嬢達の視線を追いかけ振り返る。するとそこにはグランツ様が立っていた。

 グランツ様!

 リリアーヌが驚いていると、ローズ様がすかさず前に出てカーテシーで礼を取る。

 完璧な淑女の所作だ。

 それを見たグランツ様が目を細めた。

「ローズ嬢……久しいな。元気にしていたか?」

「はい。お久しぶりにございます」

 そう言って顔を上げたローズ様は嬉しそうに微笑みながら、グランツ様を見つめている。その瞳は婚約破棄した人の目では無いように思うのは何故だろう。

 グランツ様とローズ様が並ぶ姿は絵になった。

 やはりグランツ様の隣に立つべきだったのはローズ様だったのでは……と思ってしまう。

 その時、ズキリッと胸が痛み、顔を俯かせてしまった。

 これ以上、二人を見ていることは出来なかったから……。




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